第3章 赤い髪の少年と鬼の少女
耀「芳華、笑いは止まりそうかい?」
『ちょ、無理……っ』
耀「芳華は昔からツボが浅いからね。しょうがない。それより、実弥、小芭内。あまり下の子に意地悪をしないこと」
小「……御意」
実「御意」
禰豆子ちゃんがプンスカプンと怒ってる。可愛いな。
あ、笑い収まった。
耀「炭治郎の話はこれで終わり。下がっていいよ。そろそろ柱合会議を始めようか」
『その前にこれどういう状況か説明してくれない?』
禰豆子ちゃんが私にべったりひっついて離れないのだ。すりすりして甘えるようにぎゅーっと抱きついている。可愛いけど、どういう状況よ、これ。
炭「多分、芳華さんのことを母親だと思ってるんだと思います。芳華の匂いが母さんとそっくりなので」
『お母様に……』
そうだった。この子も家族を失った子の一人。それだけでなく、鬼にされてしまった可哀想な子。
禰「(スリスリ)」
『(可愛い……)』
機嫌よく私にすり寄る姿が、家で待ってる娘たちと重なった。頭を撫でてると、ニコニコで撫でられる禰豆子。忠犬みたい。耳としっぽが見える。
『はぁ……耀哉』
耀「なんだい?」
『禰豆子ちゃんをうちに連れて行っても?』
耀「暁月邸に?なぜだい?」
『禰豆子ちゃんはひっついて離れないし、炭治郎は重症っぽいし。炭治郎が回復するまでの間、珠希と真望の遊び相手に、と思って。うちは私が許可した人間しか入れないし、それ以前に邸を見つけることも出来ないから安全だわ。まぁ、駄目と言うなら無理にとは言わないけど』
うちには目隠しの術と透明化の術、不可侵の術が施されているし、周囲が藤の花で囲まれているから、よっぽどの事がなければ安全だ。それこそ、鬼舞辻が攻めてこない限り。
耀「確かにそうだね。炭治郎、芳華がそう言っているけれど、どうするかい?」
炭「どうって……」
心配そうに禰豆子ちゃんを見る炭治郎。そのまま、視線を私に向けるので、安心させるように微笑む。
『禰豆子ちゃんは必ず守るわ。暁柱の名に誓って』
炭「わ、かりました。お願いします」
深く頭を下げる炭治郎の姿は、妹を心配する兄の姿そのものだった。
兄さん……
その姿に、在りし日の兄の笑顔が頭をよぎった。