第3章 赤い髪の少年と鬼の少女
目の前で苦しそうにする柱たち。
この程度の威圧でこのザマとは。手塩にかけて育てた愛弟子ですら耐えきれずに両足をついている。本気の半分も出てないのに。稽古が足りなかったかしら?
耀「芳華、そろそろやめてあげてくれ。これでは話が進まないからね」
『.......はぁ』
この人に言われたなら仕方がない。
醸し出していた威圧を解くと、全員が苦しそうに呼吸をし始めた。
それを一瞥し、禰豆子の入っている箱を抱えて奥に移動する。
箱を置くと、刀で自分の右腕をざくっと切った。
「「「えっ!?」」」
『禰豆子ちゃん、出ておいで』
驚いてこちらを凝視する後ろを放っておいて、血の出た腕を箱に近づける。すると、息の荒い禰豆子がゆっくりと出てきた。
蜜「な、何をして」
無「師範は稀血」
行「芳華は不死川より希少な稀血の持ち主。その血は鬼の気を失わせることもできる」
杏「そんなことが可能なのか!」
行冥兄さん。説明ありがとうございます。今言った通り、私の血はとっても希少。だから、鬼に狙われやすい。でも、その分討伐もしやすい。血を出せば弱い鬼は簡単に気を失うし、下弦の鬼も酩酊する。利にも害にもなる血なんだよね。
で、今から何をしようかというと。
昨日、耀哉から頼まれたことは二つ。一つは耀哉が来るまで禰豆子ちゃんを守ること。そして、もう一つが、私の稀血で禰豆子ちゃんが人を襲わないことを証明してみせること。
禰「フゥ、フゥ、フゥ……ッ」
『頑張って、禰豆子ちゃん。頑張れ』
禰「フゥ、フゥ……ッ」
炭「禰豆子!!」
炭治郎の叫びに、禰豆子がハッとして羽織りをぎゅっと握りしめた。
『禰豆子ちゃん、お兄ちゃんも応援してるよ。だから、頑張って』
彼女には暗示がかかってる。
人は守り、助けるもの。人間は皆家族。鬼は敵。人を傷つける鬼を許してはいけない。
だからこそ、私はこれを引き受けた。彼女ならきっとこれを乗り越えられると確信したから。
それに、おそらく.......
『(この子なら、暗示がなくても自力で乗り越えてみせる。だって、彼がいるから。だから)
……頑張って、禰豆子』