第5章 俺は好きな女が手放せない件について
「なぁ、今度の土日は?
この辺は無理だけどさ、たまには出掛けようぜ。」
「土曜日に空手なんちゃらとかいう
雑誌の取材があるからそれ出る位かな。
けど、ちょっと剣道の試合近いから自主練する。」
フレンチトーストを食べながら
そんな話を振るといつもの様に答えが返って来る。
芸能人かよと思うほどいつも土日が埋まる
とデートをするのは中々難しい。
「雑誌出んの辞めれば?
あんまり年齢公開するとまた探られるぞ。」
「引っ張ってくれる大学増えるから辞めない。
結果は結果だし。それに、バレても流行るよ
今の世の中、苦難を乗り越えっ!!
みたいなの皆好きだからきっと上手くいく。」
その予定にまでヤキモチを妬いて
不満げに呟いたらスッパリと切り返された。
それでもその理由があまりにも前向きで
やっぱりは本当にストイックだと
俺は悪い気もせずにまた素直に尊敬した。
「………”不屈の精神”って
みたいな人間に使うんだろうな。」
「私の人生は”逆境を楽しめ”だから。」
フレンチトーストを食べ終わって
似合わない煙草を吸い出したは
ほんの少しだけ目を伏せている。
いつもいつも、へこたれないでいるコイツも
普通の人間で普通の女できっと最近色々あって
本当は心底疲れているのだろうなんて思うと
どうしてもそれをどうにかしたくなって
ぎゅっ。と腕の中に閉じ込めた。