第2章 俺の弟がモーゼじゃ無くなった件について
「何でも無いことは無いだろう。こんな時間に。」
探るように視線を俺の前のパソコンに向けるので
何となくそれを__パタン。と閉じたのだが
相変わらず煉獄の険しい顔は変わらない。
どうしたもんかと悩んでいると
そう言えば”剣道部の顧問”である煉獄は
時折あの女をやたらと褒めていたのを思い出した。
「……煉獄剣道の顧問だったよなァ。」
「ああ、成程の事か。
努力家で明るく快活でとても良い生徒だ!!」
名前を出した瞬間に一瞬だけ
眉間にシワが寄ったがまるでソレを誤魔化す様に
”いつもの声”でいつものようにを
真っ直ぐに褒め称えた。
きっと本当に”自慢の生徒”なんだろう。
だからこそ”自慢のの秘密”を隠すような
その態度に絶対に何かあると俺は確信を得た。
「あいつ、何者なんだ?普通じゃねェだろ。」
「…うむ。…普通じゃないのは”お前も”だろう。」
「おい、何でそんなに焦ってんだァ…。」
「は何も悪い事はしておらんだろう!!
こんな時間に直接聞きもせず嗅ぎ回る今の
お前の姿の方が酷く歪んでいると思うぞ!!」
煉獄は俺を肴にして”話題を逸らしたつもり”
なのだろうが、コレは明らかに逆効果だ。