第9章 派手男と雌狸の過去がヤバイ件について
「なぁ、色んな背景なんて気にしないで
ソコは普通に向き合ってくれよ。」
こんなに優しく笑ってくれても
何でドキドキしないのか私にも分からない。
目の前に居る男性は誰がどう見ても
かっこよくて優しくて頼りになって
最高の人なはずなのに
私はこの人に安心感しか抱けない。
「………だから他を探そうかなって。
真剣に言ってくれてるの知ってるし
ちゃんと向き合ってるからこそだよ?
こういうの……天元は辛いんでしょ?」
「ソレは駄目。好きなやつの相手出来んだから
コレに関しては俺は得しかねぇんだからさ。
他のやつに渡すなんてそれこそ耐えらんねぇ。」
私がもう辞めようと言うと
今日見たいに優しく駄々を捏ねるか
この前みたいに死にそうな顔で固まるから
そんな姿が見たくなくて結局離れきれない。
悲しむ顔は見たくないなんて言うのは
確実に私のエゴなんだろうけど
恩人として大切なのも拭えない事実なんだ。