第9章 派手男と雌狸の過去がヤバイ件について
「天元……ごめん。」
「なにが?…俺は派手に嬉しかったけどな。」
だいぶ疲れた顔で去っていった不死川先生を
見送ってから天元に謝ったら
本当に嬉しそうに笑っていて泣きそうになった。
私は守りたいだなんて言って
恩返ししたいだなんて言って
結局の所、この人に酷く甘えている。
「……なあ。
セックス抜きにしたら普通の恋愛なんだ。
俺はお前が好きでただ手に入れたいだけ。」
私の頬に触れながら目を細めるこの人は
何でこんなに私を大切にしてくれるんだろう。
そして私は何でこんなに天元を大切に
思っているのに”男性としての好き”を
なぜ抱くことが出来ないのか。
自分が酷く冷酷な人間に思えてくる。
先生と生徒だからという理由で
形式的に気持ちに一線を貼っているのは
確かにそうだが、多分それ以前の問題なんだ。
けど、そこしかこんなに素敵な人を
好きになれない原因が私には分からないから
いつもソレを言い訳にする。
「いや、現状が先生と生徒でしょ。
そこが問題だからこうなったんだよ?」
「…付き合ってくれたら直ぐに先生辞める。」
「また、そういうことを言う。
それをして欲しく無いんだってば。
本当、最近多くなってきたよね………。」
最近本当に良くそんな事を口にする。
天元も多分、先生と生徒じゃ無くなっても
何も変わらない事を知っているけれど
この中途半端な関係に少しでも変化を
与えたくて仕方ないのだろう。