第1章 完熟トマトとヒヨコ豆の光秀煮込み 北風と太陽仕立て
「っ…」
指先に感じた不快な感触に咄嗟に引いた手はびくともせず、捕らえた私の指先に光秀さんがそれを掬わせる。
「ほら…わかるだろう?」
絡み合うふたりの指の間に ぬるり と粘液が纏わりついて、引き上げられたそこから透明な糸が垂れ落ちる。
その糸の先が繋がる場所へと導かれた指先に固いものが触れ、それを光秀さんの指が私の指ごと押しつぶした。
「…いぁっ…!」
操られる指先が豆粒を不規則に転がす度、腰がビクンと跳ねてしまう恥ずかしいカラダを、厭らしい視線に嬲(なぶ)られる。
「どうする?このまま、また果てるのか?」
それは光秀さんの意地悪の始まりと知りながら、私はふるふるとかぶりを振った。
「ならどうするんだ?」
「……っもう…」
「もう、なんだ?」
そんな不毛なやり取りをしている間にも着実に迫り来る”果て”に焦りを覚え、私は欲望のままに懇願した。
「光秀さんが欲しい…っ」
「違うだろう?」
渾身のひと言をあっけなく無下にされ、泣きべそをかきそうな私を光秀さんはさらに追い詰める。
「おねだりの仕方は教えたはずだ。……ちゃんと、できるだろう?」
「っ…だって…」
「恥ずかしくて言えない、か?……なら、言えるようにしてやろう」
「きゃ…っ!」
両腿を抱え込んだ腕にグイと腰を引き上げられ、褥の上に仰向けに転がった私は、そこから見るあまりにも下品な自分の姿に目が眩んだ。
ジクジクと滲み出した果汁にまみれた秘部を、まるで光秀さんへと見せつけるように曝して…
突き出した恥丘の向こうに、意地悪なそのひとがニヤリと嗤(わら)う。
「分かっているな、〇〇──」
分かっているからその先は聞きたくなかった。
聞いてしまったらもう逃げられない。
そうなる前に逃げなければと抵抗しようとする私に、無慈悲にもその言葉は告げられる。