第7章 婀娜な紅葉に移り香を
ふ、と秋の冷たい夜風が首筋を掠める。
思わず肩が竦んだのが〇〇にも伝わったようで、心配そうな瞳がこちらを向く。
「……本当に、寒くないですか?……やっぱり羽織、持ってき…っ」
立ち上がろうとする〇〇を抱きしめる腕の力を強めて逃がさない。
「羽織などすぐに要らなくなる……」
「っん…」
顎を掬って引き寄せ、口を吸いながら耳に首筋に指を這わせていくと、腕の中で〇〇の身体が火照っていくのがわかる。
その熱に浮かされ、挿し入れた舌で〇〇の口内を犯していく。
(このまま堕ちてしまいたいところだが……)
湧き起こる感情に理性で蓋をして、最後に口の端についた滴を舐めとって唇を離した。
「冷えないうちに褥に行くか…」
(──さて。今日から仕込みを始めるとしよう)
〇〇の膝裏に手を当てて、そのまま横抱きにして立ち上がり、褥へ向かう。
ひとつの褥の中で、〇〇を腕に抱いて横になった。
「……」
〇〇が恨めしそうにこちらを見てくるが、それに構わず子供を寝かしつけるように背を叩いてやる。
そうしているうち、〇〇は何かを納得した様子で俺の胸に顔を埋めた。
「おやすみなさい、光秀さん…」
「ああ、おやすみ」
おそらく、俺が疲れているのかも、とでも思い違いをして、無理はさせまいとしたのだろう。
(……まったく健気だな)
その真意を知らぬまま目を瞑った〇〇の背をゆるく擦りながら、暫く呼吸を合わせてやると、ふと腕にかかる重みが増す。
「──〇〇?」
呼ぶ声に返ってくるのは静かな寝息。
(眠ったか…)
起こさぬよう、衣擦れの音すら憚(はばか)るようにそっと褥を出る。
身支度を整え、最後にもう一度、穏やかな寝息を立てる〇〇の額に口づけをひとつ落とし、愛しい温もりに後ろ髪を引かれる思いで部屋を出た。