第6章 想ひ想はれ常しへに、夏。
お揃いの桔梗紋の浴衣を着て…
指を絡め合うように手を繋いで…
溜息が出るほどに幸せな気分に包まれながら、ふたりで町を歩いていると──
暫く行ったところで、沿道で盆踊りの列を眺めていた人達が、お囃子の調子に合わせ音頭を取り始めた。
すると、その手拍子が伝染するように広がっていき、徐々に人の輪ができ、そこで踊り始める。
誰彼構わずそこに居合わせたもの同士、輪になって踊るその楽しそうな人たちを光秀さんと眺めていると…
「そこのご両人!そんなとこで突っ立ってないで、ほら!」
「え!?わっ、ちょっ…」
踊っていた人たちが、傍(はた)から見ている私たちに気付いて、手を引いて輪の中へ引入れられる。
「あの、私、こういうのやったことなくて…」
「いいの、いいの、型なんて適当で!」
よく見るとみんな振りなどバラバラで、その場の楽しい雰囲気と町の人の気さくさに誘われるがまま、私たちも見様見真似で踊ってみる。
光秀さんも振り付けは知らないようだったけれど、光秀さんは適当に踊ったところで様(さま)になってしまうから困る。
舞踊も嗜む光秀さんから繰り出される洗練された所作は、とても見惚れずにはいられなかった。
この町を訪れてからというもの、私の知らない光秀さんの新たな一面をまた知って、光秀さんのことを増々好きになった。
この人の魅力は底が知れない。
きっと、まだまだ私の知らない光秀さんがいて、今でもこんなに大好きなのに…
(この先何度この人に惚れ直すことになるんだろう…)
光秀さんの築いた町で、私はそんな幸せな悩みの種を胸に抱いた。