第6章 想ひ想はれ常しへに、夏。
そうして、町の人たちと楽しく踊ったあと──
再び手を繋ぎ合いながら光秀さんと歩いていると、目移りしてしまうほど数ある露店の中のひとつに目を惹かれる。
「あ…」
思わず足を止めた私につられて足を止めた光秀さんが、どうした、と問いかけながら、私の視線を追って納得したように呟く。
「ああ、飴細工か……懐かしいな」
「そうですね」
前にも、お祭りの露店で光秀さんに飴細工を買ってもらったことを思い出す。
「買ってやろうか」
「いえ!別に欲しいわけじゃ…」
「いいから。遠慮するな」
少し強引に光秀さんに手を引かれながら、お店へと向かった。
──買ってもらった飴細工は、透明な飴で金魚を模(かたど)ったもので、それは硝子細工のように美しく、見ているだけで涼し気で、角度を変えてあらゆる方向から眺める私を、隣で光秀さんが微笑ましく見つめていた。
そして、お祭りも終盤へと向かう頃──
さっきまでお囃子を鳴らしていた櫓(やぐら)にふたりで登り、賑わう町並みを一望する。
片手には買ってもらった金魚の飴細工。
もう片方の手は指を絡めしっかりと繋がれたまま…
お祭りで賑わう夜の町を照らす提灯(ちょうちん)の淡い光の中、眼下に広がる楽しそうな人々を見ていると、自然と笑みが零れてくる。
「随分と嬉しそうだな。そんなにその飴が気に入ったか?」
「違います!飴を買ってもらって喜んでるんじゃないです……子どもじゃないんだから…」
口を尖らせてみせながらも、こうして光秀さんに揶揄されることも今は嬉しくて、尖らせた口元もすぐに緩んでしまう。
「ありがとうございます、光秀さん…」
「ん?」
「私をここに連れてきてくれて。……私、この町好きです。光秀さんが創った町、好きです…」
私がそう言うと、九兵衛さんが言った通り、光秀さんは嬉しそうに微笑んでくれた。
だから私も嬉しくなってつい、使い慣れた言葉が口を吐いて出た。