第6章 想ひ想はれ常しへに、夏。
その言葉の意味がいまいち読み取れなくて首を傾げた私に、九兵衛さんが誇らしげな笑みを浮かべる。
「ここは、領民のことを第一に考え、光秀様が一から築かれた町なのです」
「っ!…そうだったんですね…」
「今は御城主は光秀様ではございませんが、この町の礎(いしずえ)を築かれたのは間違いなく光秀様です。故に、この町の民は皆、光秀様をお慕いしております」
(領民のことを一番に考えて光秀さんが築いた町……)
この町の雰囲気が温かく感じたのは、ここで人々が幸せに暮らせているからで、それは領民のことを一番に考える光秀さんの想いの証。
いつも悪役を演じて人から恨みを買うことのほうが多いから、光秀さんのことをよく思わない人は少なくない。
けれど、この町の人たちはきっと、誰よりも平和を願う、優しい本当の光秀さんを知っている。
だからかも知れない。
初めて来たこの場所が、居心地良く感じたのは。
そう思うと、この町がとても愛おしく感じた。
またひとつ、私の知らない光秀さんの貴重な話を九兵衛さんに教えてもらって、恋人としてもその功績を誇らしく思いながら歩いていると──
俄(にわか)に沿道に人が集まりはじめ、その前を私たちと同じ桔梗紋の浴衣に、編み笠を被って連なる盆踊りの列が通り行く。
その優雅で風情ある光景に見惚れながら、ぼんやり思う。
(一緒に歩きたいな…)
光秀さんが築いた町を、光秀さんと一緒に歩きたい。
けれど、そう思った時に隣にいないことが、酷く寂しくて恋しくて、堪らなくなる。
(早く逢いたい…)
「光秀さん……遅いですね」
思わず零れ出た言葉だった──