第5章 愛しけりゃこそ強とと打て※18禁域※
気怠い微睡みの中で、額に柔らかな感覚を覚え意識が浮かび上がる。
しとしと降る雨音が耳に心地良い。
「──おはよう、〇〇」
ぼんやりとした視界の中に映るのは、優しく微笑む愛しい人。
「……ん……もう朝ですか?」
「いや、夜明けまではまだ数刻ある」
少し掠れた低く穏やかな声を聞きながら、褥の中で素肌が触れ合うことに違和感を覚える。
僅かに視線を下ろすと、私も光秀さんも着物を纏っていないことに気付く。
(…っ!私──そうだ。昨日は…政宗にからかわれて……危機感がないって、光秀さんに叱られて…)
寝ぼけた頭で昨夜の記憶を辿っていくと、ふとある疑問が浮かんだ。
「そういえば……光秀さん、どうして政宗が足を挫いたって知ってたんですか?」
足を怪我していることはわかっても、光秀さんがあの場に来た時には掠り傷だって政宗は言ったはず。
(……まさか)
「いつから見てたんですか?」
「お前が政宗に声をかけたところだ。何なら、お前が政宗を見つける前に、俺はお前を見つけたぞ?」
(すっごい最初から見てた!)
「それなら、もっと早く声を掛けてくれれば…」
「政宗も俺が見ていることを知っての仕業だろう。あれはお前をからかうより、俺にやきもちを妬かせて怒らせるのを楽しんでいたんだ…」
確かにあの時、光秀さんはすごく怒ってるように見えた。
それを私もヤキモチだと自惚れてしまったくらいだ。
「……でも、結局光秀さんはヤキモチ妬いたわけじゃないんですよね?」
「そうだな」
「じゃあ…あれは怒ったフリ、ですか?」
「ああ」
「……なんでわざわざそんなこと…?」
「お前に意地悪できる口実になるのなら、政宗の挑発に乗ってやるのも悪くないと思ってな…」
「…………やっぱり、お仕置きなんて言いながら半分は私に意地悪して楽しんでたんじゃないですか…?」
「おや。まだ反省していないようだ。これはもっと厳しい仕置きをしなければならないな…」
「っ!うそ、嘘です!反省してます!心の底から!」
慌てて平謝りする私を見て、光秀さんが笑いを堪えて肩を揺らす。
(やっぱり、光秀さんには敵わない……でも……)