第5章 愛しけりゃこそ強とと打て※18禁域※
「少しくらい、ヤキモチ妬いてくれたって…」
「悪いが、それは無いな」
あまりにも余裕綽々な光秀さんに、ちょっとムッとしてしまう。
(大人な光秀さんがヤキモチなんて妬くはずないって、わかってはいるけど…)
いじけて俯く私を、長い指が顎を救い上向かせる。
目を逸らす余白がないくらい間近に光秀さんの端正な顔が迫って、まだ先程までの情事の色が残る瞳に視線を奪われると、呼吸すらままならなくなる。
息を呑む私を見つめたその瞳を、ふっと細め、艶めかしい声が囁く。
「お前が他の男に現を抜かすことなどないよう、躾けてあるからな。……それはこの身体が一番よくわかっているはずだ…」
「…っ」
腰の隆起を人差し指が すーっ となぞって、肌の粟立つ感覚が先程までの余韻を呼び起こす。
「お前は俺から逃げられない……そうだろう?」
(っ…)
悔しいけどその通りだ。
この身も心も、もう光秀さん以外満たすことはできない。
それが悔しいのに…
それが嬉しい…
「っもう!……ずるいです……」
口を尖らせる私を宥めるように、光秀さんの手が頭を撫でる。
「さあ、お喋りはこのくらいにして、もう少し眠れ。寝ぼけ眼で仕事に行かせては、針子仲間への言い訳にお前が困るだろ?」
「え?」
「俺は別に、"恋人に朝まで抱き潰された"と言ってくれても構わないがな…」
不意打ちの刺激的な言葉に、一気に頬に熱が集まる。
赤くなった顔を見られたくなくて目の前の逞しい胸板に顔を埋めると、光秀さんはくつくつ笑いながら、私の耳朶をぴんと弾く。
(…っ!)
頭かくして尻隠さずなことになっていることに気付いて、慌てて布団を引っ張り上げ、耳まで覆った。
(これ以上意地悪されたら、本当に明日の仕事に支障が出る!)
ここは一刻も早く寝ることが得策と、ぎゅっと目を瞑った。
「おやすみなさい!」
「ああ、おやすみ…」
眠りへの挨拶と共にこめかみに優しい口づけが落ちる。
そうして、光秀さんの腕に抱かれながら、夜明けまでの僅かな時、幸せな夢の中へと堕ちていったのだった──
おわり
2020.7.25