第4章 愛しけりゃこそ強とと打て
──光秀さんのお誘いで、私たちはご飯屋さんへ訪れた。
「何でも好きなものを食べろ」
「……じゃあ、うどんを…」
お店のご主人に注文を伝え戻ってきた光秀さんが隣に並んで座る。
「………」
お昼時を過ぎたご飯屋さんには、私たちの他に誰もいない。
「………」
ここまでさっきの政宗との出来事に一切触れようとしない光秀さんと、その言い訳を切り出せない私。
ふたりの間に流れる緊張感のある沈黙がいたたまれない。
(光秀さん、やっぱり怒ってる…?)
それに、光秀さんから感じるこのピリついた空気…
もしかしたら、気のせいかもしれないけど…
(……やきもち、妬いてる?)
もうしそうなら、光秀さんには悪いけど
(ちょっと、嬉しい…)
けれど、同時に不穏な予感も湧き起こる。
きっと、このままでは後々後悔することが起こる気がする。
そうなる前に誤解は解いておきたい。
だけど、光秀さんがその話題に触れてこないのが気になって、なかなか言い出せない。
どうしたものかと、読めるはずもない表情をつい横目でチラチラ伺っていると、何度目かのチラ見の末に、ばちっと目が合ってしまう。
「っ!!」
「なんだ?」
「いえ!あの…えっと…あ!光秀さん……お仕事は?」
「ああ、予定よりも早く片付いたんでな、今日はもう終いだ。このあとの時間はお前と過ごせる」
「…そう、ですか……」
いつもならば、それは心躍るお知らせなのだけれど、今はただ気まずいだけだった。
いつも忙しくしている光秀さんと過ごせる時間は何よりも大切なもの。
その大切な時間をこんなことで無駄にしたくないのに…。
「どうした?さっきから浮かない顔をしているな…」