第4章 愛しけりゃこそ強とと打て
政宗は笑いをククッと堪えるようにしながら座ったままくるりとこちらに向き直って、今度は光秀さんを正面から見上げると、片頬に笑みを浮かべる。
「そんな怖い顔するなよ。じゃれてただけだろ。なぁ?〇〇」
そう言いながら、光秀さんの横からひょいと顔を覗かせる。
後ろで乱れた着物を整えながら睨む私を鼻で笑うと、さっきは支えがないと立てないと言ったはずの政宗が何の支えもなく、すくっと立ち上がった。
「あっ…政宗、足……!?」
「ああ、藪で引っ掛けた掠り傷だ」
すたすたと廊下を歩いていく政宗の姿に一瞬呆気にとられるけれど、すぐに怒りが込み上げてくる。
「…っ!嘘つき!」
悪びれもせずひらひらと手を振って去っていく政宗の背中に悪態を吐いたのを最後に訪れたのは、気まずい静寂。
ふと、先程政宗に向けられていた光秀さんの眼を思い出し、隣に佇むひとを恐る恐る見上げる。
「……あの……光秀さん…?その…さっきのは、本当に事故…」
「〇〇」
「はいっ!」
「腹は減っていないか?」
「…へ?」
唐突な問いかけに疑問は浮かぶけれど、今その理由を光秀さんに聞ける気がしない。
ここは質問に忠実に答えるべきだと、自分のお腹に聞いてみる。
(……着物のお届けが終わったら何か軽く食べようと思っていたから、そう言われれば…)
「……はい、減って、ます…けど?」
「ならば、昼餉にしよう」