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★イケメン戦国★明智光秀と、はぶ・あ・ぶれいく♪

第2章 狐の恩返し


私の声に足を止め、光秀さんがゆっくりと振り返る。

息も絶え絶えな私とは正反対に、極めて落ち着いた声で…



「どうした、何かに追われているのか?」



からかうような物言いにも反論する余裕もなく、私は性急に答えを求めた。



「はぁ、はぁ…これ……光秀さん、ですよね?」

「……はて、何のことやら」

「どうしてっ……直接渡してくれれば……」

「さっきから何をわけのわからないことを言っている」



私が気付くように仕向けたくせに…。



(……なんで、はぐらかすの?)



「わかってるんですから……光秀さんだって」

「何を根拠に?」

「……この香り。光秀さんが使っているお香ですよね?」



いま目の前に居る人と同じ香りがする帛紗を掲げてみせる。



「あの香は特段珍しいものでもない。何処でも容易に手に入るものだ。それだけでひとりの人物を特定するのは、少々浅はかだぞ」



それだけじゃない。



(あの男の子が持ってた風車…)



言いかけて口をつぐんだ。



これ以上問い詰めても、きっと光秀さんはどこまでもはぐらかすつもりだ。


諦めの言葉が口を吐く。




「……じゃあ、一体誰だって言うんですか…」



俯いてそう言う私の頭を  ぽん とひとつ撫でながら、光秀さんが横を通りすぎていく。



「……さあな。逢魔が時だ。狐にでも化かされたんじゃないのか?」

「そんなわけ…」



そのまま私が走ってきた方向へと歩いて行く光秀さん。



「直に日が暮れる。小娘は家に帰る時間だ。……もたもたしていると、次は魔物に喰われるぞ」

「……あっ、待って下さい」



離れていく背中を追いかけ、斜めに伸びる光秀さんの長い影を踏んでしまわないように、少し後ろをついて歩く。








大きな背中をじっと見つめてみても、光秀さんがこんなことをする理由が分かる筈もなくて…。



だけど、嬉しいこの気持ちの理由は何となく分かっている。



でも、未だそれは朧気で、自分でも確信が持てない。



それでも、あの時胸に湧いた気持ちが、どうしても誤魔化せない。









だから───


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