第12章 小娘の逆襲
嘘偽りのない本心。
それはどんな慰めの言葉よりも、〇〇の心に届くはずだ。
「そして、巾着と手拭いはそれを忘れるなと言う意味だったのだろう?」
「……どうしてわかっちゃうんですか……」
「〇〇の"想い"は、言葉にせずともわかっている」
「……そう言ってくれるのはうれしいですけど………なんだか、負けた気分です……」
「何を言う。見事な逆襲だったぞ。今回はお前の大勝利だ」
言いながら膨れた頬を指先でつん、とつついてやると、それがすっとしぼんで、綻んだ。
「……光秀さんがそう言うなら……そういうことにしておきます」
漸く笑った〇〇の頬に手を伸ばし、手のひらでそっと包む。
「次はいっそのこと、一生俺がお前の手からしか物を食えなくなるようにでも躾けてみるか?」
「またそういう冗談言って……」
そう言って〇〇は笑ったが、あながち冗談でもなかった。
(今まで誰かに忠義を誓ったことなどないが…)
さらりと零れ落ちる〇〇の髪の束を耳にかけてやりながら、頭を軽く引き寄せると、その瞳が静かに閉じる。
今だけは意地悪はなしにして、素直な気持ちのまま優しく唇を重ねた。
(〇〇のためならば、いくらでも従順になろう…)
そう誓いを込めて──
おわり。
おまけ>>>