第12章 小娘の逆襲
【おまけ】
『ちまきのきもち』
(──うーん…もうちょっと…)
限界まで頭と後ろ脚を近づけるけど、そこは絶妙に届かない場所だった。
(……あ、つりそう…っ…)
無理な体勢に耐え切れず、頭からごろんと地面に転がった。
(やだ…いま、私、とっても不細工だったわ……)
すました顔で座り直し、すぐに周囲を確認する。
(大丈夫、誰も見てない)
いま、私は見えない敵と戦っていた。
両耳のちょうど間。
手も足も届かないところが猛烈に痒い。
(もう限界……どこか擦りつけられる場所はないかしら……)
辺りを見回し、体を掻けそうなものを探す。
(……あ!あの縁側の出っ張りがちょうどよさそうね)
一刻も早く、このやり切れない苦悶から解放されたくて、私はそへ向かって駆け出す。
──と、何かの気配を感じた。
(……っ)
野性の本能が働いて、すぐに足を止め姿勢を低くする。
それが何かを、目と耳と鼻で慎重に探った。
(──あら?)
縁側にあった見慣れた姿に、少しだけ警戒を解いて忍び足で近づいていく。
(あそこにいるのは……〇〇様と──主様……?)
縁側に座っているのは〇〇様に間違いないと思うけど、その膝を枕に身体を横たえている主様らしき人が疑わしい。
いつもしゃんとしている主様のこんな姿は初めて見る。
(……あの人、本当に主様かしら?──……ま、まさか!〇〇様が浮気!?)
事と次第によっては主様に報告しなければと、真相を確かめるため、近くまで行ってまじまじとその姿を観察する。
(容姿は主様と瓜二つね…)
「どうした、ちまき。狐が狐につままれたような顔をして…」
(その意地悪な口ぶりも、いかにも主様らしいけど……──どんなに姿かたちが似ていたって、私の鼻は誤魔化せないんだから!)
警戒しながら更に近づいて、主様らしき人の体をくんくんと嗅ぐ。
頭から爪先まで念入りに…