第12章 小娘の逆襲
久しぶりに〇〇の手料理を味わった後──
さすがにくたびれた身体をそこへ横たえた。
「ずっと、お前のこれが恋しかった」
「……膝枕、ですか?」
「ああ。天幕の柱では寝心地が悪い」
「ふふ、九兵衛さん驚いてましたよ。光秀さんがうたた寝してたって。……あと、ご飯もちゃんと食べてくれんですね。嬉しいです」
「〇〇の握り飯でなかったことは残念だったが……可愛い連れ合いが心配して神経をすり減らしているかと思うと、これ以上不養生(ふようじょう)をするわけにはいかないからな…」
「それを自覚していただけたならよかったです」
そう微笑んだ〇〇があまりにも得意げな顔をするものだから、その謀略の成果を讃えてやらずにはいられなかった。
「躾は大成功、だな」
「はい。大成──え?……ちょっと待ってください……どうして躾のこと知ってるんですか?」
「俺を誰だと思っている?」
今度はこちらが得意げに微笑んでみせると、〇〇はぱちぱちと何度か瞬きをしたあと、はあっと大きなため息をつき、がっくりと項垂れた。
「……あとでネタばらしして驚かせようと思ってたのに……」
「それは悪かったな……。まあ、惚れた弱みにつけ込んだ、ほとんど賭けのような戦略ではあったが……」
「……!つ、つけ込んだなんて…人聞きの悪いこと言わないでください…」
「悪い悪い……まあ、何はともあれ躾は大成功ということだ。俺をこんなふうに躾けられるのは、後にも先にもお前だけだ。誇りに思え」
そう言っても、〇〇はまだどこか納得いかない様子だった。
ならば、どうすべきかはわかっている。
(本来ならば、不得意なことではあるが…)
相手が〇〇ならば、それは惜しげもなく紡ぐことができた。
「今までは、この身も心も己のためだけのものだった。だから、傷つこうが壊れようが構うことなどなかった。だが、今は違う。この身を案じ、傷つくことを悲しんでくれる、愛しい娘がいる。そう思えば、この身も粗末には扱えまい」
「……光秀さん」