第12章 小娘の逆襲
跳ねるように軽い足取りが揺らす〇〇のひとつに結った長い髪は、まるで犬ころが喜んで尻尾を振っているようで、油断をすれば頬がだらしなく緩みそうになる。
そうはさせまいと頬に緊張を保ちつつ、それが迷子にならないよう見守っていると、つい柄にもないことが頭を過(よぎ)った。
(元来、こんな子どもじみた真似をする性質ではないのだが……)
そんな時、いつも〇〇への言動が意地悪めいてしまうのは悪い癖だとは思う。
だが、心のままにころころと変わる百面相が愛おしくて、どうしてもやめられない。
その背中を追いかけ、両手で抱える荷物を後ろからひょいと取り上げた。
「あっ…自分で持てます」
「片手で持つには少し大きいだろう……それとも──」
荷物を取り返そうと伸びてくる手を軽くあしらいながら、〇〇から遠い方の手で荷物を抱え、近い方の手でその温もりを捕まえた。
「──お前とこうしたいと思っているのは、俺だけか?」
繋いだ手を揺らしてみせると、〇〇は視線をさっと地面に逃がすようにしてふるふるとかぶりを振る。
「……私も……光秀さんと、こうしたい、です……」
きゅっと握り返してくる小さな手をしっかりと繋ぎ直して、まだ始まったばかりの〇〇をとことん甘やかすべく今日の逢瀬に、増々頬が緩んでいくのを認めざるを得なかった。