第11章 【寸話/18禁】化粧直し
「で、でも!……私にこの色はちょっと……大人っぽすぎて似合わない、ですよね……?」
「ああ、似合わない」
「…え」
「まったく、まるで、さっぱり似合わない」
「っ、そこまで言わなくっ…んんっ──」
脈絡もなく降ってきた口づけに驚いて逃げる腰をすかさず掻き抱かれ、性急に深まるそれは強引なのに甘くて、苦しいのに気持ちよくて、身体は瞬く間に熱を持ち全身の血が沸騰したみたいに熱い。
熱に浮かされ意識がぼんやりとしていくその感覚は、淫らな行為で感じるものとよく似ていて…
今にもとろとろに蕩けてなくなってしまいそうな身体を、きつく抱き寄せられた胸に縋りついて支えるのが精一杯だった。
「っはぁ…はぁ…はぁ…」
眩暈がするような口づけから解放されても、頭がぼうっとして文句も言えず、苦し紛れに責めるように見上げた視線は…
やっぱり交わらなかった。
──紅く汚した唇──
それが私の視線を奪ったから。
まるで血を吸ったあとの吸血鬼のような危うい色香を放つその唇に、今度は私がそこから目を離せなくなってしまったからだった。
囚われた視線の先で、紅い汚れを手の甲が乱暴に拭い取り、それがゆっくりと弧を描く。
「だいぶ見られるようになった。だが、まだ少し彩りが足りない、か……。──ああ、それも当然か…」
温度のない声が呟いて、指先で顎を掬われ上向かされると、ばちりと視線が交わった。
「お前が一番美しく色づくのは、俺に抱かれている時だからな……」
すっと細めた妖しげな瞳に射抜かれ、毒で全身が痺れたみたいに動けない。
「さて、〇〇……化粧直しをしようか──」