第1章 iw×fk
岩本side
あの日から2日。
俺は、久しぶりに阿部とサシで飲みに来ていた。
なんでって?そりゃあ…俺がどうすればいいのか相談するためだ。
あの日から俺の頭の中は恥ずかしいくらいふっかの顔、声、仕草で埋め尽くされていて、特に『俺は照が隣に居てくれるだけで幸せだよ?』という言葉が嫌という程、脳裏にこびりついていた。
阿「でさ…照自身はどうしたいの?」コテン
相変わらずあざとすぎる首コテンをかました阿部はグビッと酒を1杯喉に流し込んでから聞いてきた。
「どうしたいって言われても…」
阿「んじゃ質問変える。あの日、照はふっかと色々あったんでしょ?」
「ん、まぁ…一応な…?」
阿「照はどう感じたの?どう考えたの?」
俺はあの日起きたこと、そして今日まで考えたことを全て阿部に話した。
「……で、その言葉だけ頭から離れないんだ…」
全て聞き終えた阿部はニンマリと口角を上げて、でも決してからかうような笑みではなく、なにか難しい問題が解けたようなそんな顔をしていた。
阿「照もふっかもお互い何も言わなくても思ってることが分かる関係だと思ってるんでしょ?」
「あぁ。大体は分かるよ?」
阿「じゃあさ、ふっかの幸せって何?」
ふっかの幸せ…俺が隣にいること…普通の家庭を持つこと…?
いや…何故だか2個目は違う気がする。
じゃあ俺がふっかと付き合えない理由だったそれが、ふっかにとっての幸せじゃないんだとしたら……
阿「ちょっとは分かったんじゃない?自分がふっかに何をしてあげるべきなのか。」
「あぁ……なんで俺、気付かなかったんだろ…?」
阿「照ってさ、あ、案外ふっかもなんだけど、お互いのことなんでも分かる、知ってるって思い込んでるでしょ。」
阿「でも意外と俯瞰的に見ると分からないとこ沢山あるんだよ、きっと。」