第1章 暗闇
それからすぐに父の側近(もちろん男)から女性としての任についてのあれこれを教えられた。
そして手ほどきは、兄からによるものだった。
屈辱的で、耐えられるものではなかった。兄は終始私を罵倒し続けた。一家の汚点、醜い女、生きる価値のない哀れな女。
長男は特に私を嫌っていた。昔から嫌がらせもすごかった。
さすがに(長男が誤ってでも私を殺すことが無いように。利用できなくなるから)と父も手ほどきでは相手をさせなかった。
だからと言って次男をよこしても欲しくはなかった。次男はそれはそれは罵倒の言葉がひどく、長男程ではないが嫌がらせをしてくる。
本心では三男か四男を寄こしてほしかった。三男と四男は比較的こちらに干渉してこないから事も速やかに進むであろうし、余計な心の傷も追わなくて済む。
それを考え手配する父でもないため、傷は軽傷で済んだかもしれないが・・・
“初めては優しくしてほしい”という女性の惚気話を耳にしたとき、私も心の隅でその思いを募らせた。
けれどそんな思いも儚いものだった。
そもそも、世間体で言えば兄妹、家族の交わりは禁忌であろう。
だが、父は道徳に反したことを普通に行えるほどには異常だった。
だから世の中の幸せなど、希望を抱いても、すがったとしても無駄だという事はわかっていた。
次男「明日は戦地へ行くかの?」
情事を終え、衣服を整える兄はこちらを振り向かずに問うた。
雪華「はい。頭領様がご子息の近くで戦闘、との指示を受け
ました」
次男「そこまで聞いてない。 ああそうだ。孕んだら降ろせ、お前の子は使えそうにない。」
そう言い終えて、立ち上がった。
雪華「…はい」
だれがあなたとの子を孕むものですか。
乱暴に扱われた自分の体を見てから、兄が部屋を出て行くのを土下座の様な体制で見送った。
背中には“死ね”と気づかれない位の殺気を向けた。
腰辺りには強く押さえつけられた跡がくっきりと残っていた。
首には最中絞められた跡があり、尻は強く叩かれて真っ赤になっていた。
明日の戦闘に響くだろうことはわかっていて、わざとやっているに違いない。
兄に、先ほどの倍の殺気、殺意を放った。