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さくら

第9章 少しずつ、幸せを




 白無垢と袴はしっかりと手洗いをして汚れではなく匂いをとる。

 ごしごしと洗わずに、優しく丁寧に。

 しかし、羽織袴はまずは水に付けておく。

 こっちの方が匂いが染み込んでいるだろうから。(柱間さんと肩組んでお酒飲み干していたから…すごく楽しそうで、幸せそうだったなぁマダラ様)

 ふと、前にマダラ様と洗濯をしていた時のことを思い出した。

 私がこの家に来てから約半年くらいだっただろうか。

 川魚をとりに行くと約束して、結局は熊と鹿を狩って、豪勢な食卓に魚の一匹もいなかったことを思い出した。



雪華「(結局イズナ様もマダラ様も私も、食べきれなくて数日は熊と鹿の料理が続いたんだっけ…)」


 ふふ、と一人笑ってしまった。

 布を見つめ、白の生地に泡立っている泡一つ一つが、生まれてから私が与えられたものだと置き換えてみた。

 父、兄達、ヒカクさん、マダラ様、イズナ様、柱間さん、扉間。
 

 肉親の家族から与えられたのは、愛ではなく憎しみと憎悪、けれどそれは私を強く育ててくれたことには変わりない。

 恨んでいないと言えばウソにはなるが、すべてを否定する気持ちもあまりない。

 過去は過去で、今を見て生きていこうと思える。

 いつか、夢の様に思い浸る、父と母の愛を受けてみたかった。

 兄達から色々な事を学んだり、喧嘩をしたりしてみたかった。


 ・・・もう私は肉親の家族と出来ることはない事。

 だけど、マダラ様と、いずれ出来るかもしれない子供とやって行けばいいと思う。



雪華「子供かぁ(マダラ様と名前考えたいなぁ…柱間さんとかに助言してもらって…ふふ)」



 これからが楽しみで、幸せだ。



雪華「(考え事し過ぎた…早く終わらせて私もお風呂に入らないと)」


 泡を落として、白生地をパンパンと伸ばす。



真っ白な生地には汚れ一つない。
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