第5章 開花
今では直接話すことはなくなった。
まぁ元々直接なんて話してないけれど…
しかし、いまだに父の監視下であることは確かだろう。
父から文で時偶に任務が下りることがある。
しかし女としての任は一度だけで、ここ半年下されていない。
頭領宅に越してきてから一か月の頃に色の任務が下った。
夜、屋敷を抜け出し指定された場所まで向かった。
遊郭として有名な店で、そこに来る敵一族の長を殺さぬよう情報を聞き出せとの事だった。
マダラ様には父から伝えているらしく、私から直接は伝えなかった。
つまりは無言で屋敷を抜けてきたのだ。
しかし万が一にも、探しに来てくれてしまってはいけないから置手紙を残してきた。朝までには戻るとだけ。
遊郭では、女らしい妖艶でどこか美しさもある着物を一着借りて、化粧を施して任に就いた。
今では思い出したくもない、男の手の感触、声、息遣い。
過去に埋め込みたいあくどい思い出だ。
無事任務を達成し、事の出来事すべてを写輪眼の幻術で書き換え、遊郭を後にした。
帰りに洞窟を見つけ、そこで流れていた水で体を清める。
その後すぐに巻物に手に入れた情報を書き留めた。
口寄せ契約をしている烏に巻物を持たせ父の元へ急ぎ渡すよう朝日登る薄暗い空に放った。
屋敷に帰れば、居間に人の気配を感じた。
そこには腕を組み私の置いた置手紙をじっと見ながら椅子に座るマダラ様がいた。
それに驚きすぐに中に入れば、どこへ行っていたと詰め寄られ渋々事の全てを話せばマダラ様は、お前の父からは何も聞いていない、と言われた。
今思えばあの時のマダラ様の顔はどこかあの時のヒカクさんに似ている気がした。