第4章 我妻善逸
「ぶぇっくち!!」
善逸は大きな声を出してくしゃみをした。
「あはは!変なくしゃみ〜」
「あ、今日さ、俺んち、親も獪岳もいないんだけど…来る?」
「なんで?」
「いや、ほら俺ら濡れてんじゃん。こっからだったら俺ん家の方が近いでしょ?」
そういう善逸の顔は赤かった。
なんで善逸の顔が赤いかはよく分からなかったけど、たしかに一理あると思って、私は肯定の返事をした。
「じゃ、帰ろっか」
善逸は落ちた傘を拾い上げて、またさし始めた。
赤信号で止まった時、私は口を開けた。
「私、もう善逸のこと諦めようと思ってたんだよ、危なかったね」
クスクスと笑って私は言ったが、善逸と目が合わない。