第4章 我妻善逸
善逸が大きく息を吸って、私をまっすぐ見た。
「俺…言われたんだよ、その子には、『いっつも善逸くんが沙織ちゃんといることが辛くなった、私よりも沙織ちゃんなんだね』って。俺、その時さ、違うって言えなかったんだよ」
なに…なんなのそれ…
私は何も言えなくて、ただ善逸が話すことだけに耳を傾けていた。
「ほら…俺、耳いいの知ってるでしょ?その子からはノイズがしたんだ、汚い音。でも今…沙織からはしない。すごい心地良いんだよ」
善逸がそう言って微笑んだ。
「なんでなんだろ?って考えてみたら、俺やっと分かったんだ」
打ちつける雨の音が遠のいていく。
「俺、沙織のことが好き」
善逸はそう言って私を抱きしめた。
もう諦めようと思って、もう関わらないでおこうって決めていたのに、そうやっていつも私を振り回す。
そんなあなたを嫌いになりたいのに嫌いになれなくて、ずっとずっと好きだった。
「もう…遅いよ…」
私の涙は全部雨と混じっていく。
「ごめん…俺…ほんとに…」