第4章 我妻善逸
胸が一気に締め付けられ、視界がぐらりと揺らいだ。
「む、む?」
禰豆子ちゃんは私のカーディガンの裾を引っ張って、私を動かそうとしている。
そんな禰豆子ちゃんの手を握った私の手は冷や汗でベタベタだった。
ーそりゃ…そうだよね、彼女だもんね、キスくらいするよね…
善逸と彼女のいる世界に私はいない。
どうして私じゃなかったんだろ…
私の頬を一筋の涙が流れた。
「あ…え?」
拭ってもぬぐっても、止まらない。
禰豆子ちゃんは一瞬ギョッとした顔をして、私の涙を手でぬぐってくれていた。
「む、む?むむー…」
「ご、ごめん…禰豆子ちゃん…わたし…」
禰豆子ちゃんも何かを察知したのか、右のほうを見て、一瞬動きをとめると、私を半ば強引に抱きしめてくれた。