第20章 冨岡義勇
オイルが肌の温度に馴染んできたのか、全身がポカポカしてきた。
「彼氏にマグロだって言われちゃって」
「お前は魚ではないが?」
「ぶふ!!」
私は思わず噴き出して笑う。
腰の辺りを施術しながら、冨岡さんはきっとハテナマークを頭の上に浮かべているに違いない。
「そういうのじゃなくて、う〜んと…そういう行為をするときに全く反応が無さそうにすることを言うんです」
「なるほど…では綾川は不感症なのか?」
冨岡さんの指が腰のリンパを強めの力で押す。
私は痛くて眉をしかめた。
「どうなんだろうと思って、今回、このマッサージを…頼んだんです」
「なら俺に任せておくといい」
冨岡さんは私の肩を軽く掴んで、仰向けになるように促す。
私はそれを察して仰向けになると、顔をあげたすぐそこに冨岡さんの整った顔が現れた。