第20章 冨岡義勇
「ふぅ…」
私は息をついて、席に戻ろうとすると冨岡さんに肩を掴まれた。
「ありがとう」
ー犬…みたい
「いえいえ、でも、冨岡さんもちゃんと言った方がいいですよ」
こくん、と控えめに頷いた冨岡さんは私の肩から手を離して自分のデスクへと戻って行った。
「沙織さんはお人好しなんですねぇ、冨岡さんは放っておけばいいのに」
「そういうしのぶ先輩は容赦なく放って置きますよね…」
「ふふ、そりゃそうですよ〜、ではでは」
しのぶ先輩は小さく手を振って、いい香りを漂わせながらどこかへと消えていった。
ーなんでか冨岡さんは放っておけないんだよな…
私は頭の片隅に小さな疑問を残したまま、仕事に打ち込んだ。