第17章 【下弦の伍】累
「累ー?誰それ」
「僕のお嫁さん。だから食べちゃダメだよ姉さん」
姉さん?
10年前は姉さんなんていなくて、ここに累くんしかいなかったはずなのに…
ーん?ていうか…
「お、お嫁さん?!」
「うん、君は僕のお嫁さんだよ。お嫁さんになるために来たんでしょ?」
累くんは淡々とした口調で話しつつ、私を平屋に連れていき、あの時と同じ居間に通された。
綿が今にも出てきそうな座布団が横に2つ並べられていて、私と累くんはそこに座った。
「私、実は婚約者がいて…もう、結婚したの」
「うん、知ってたよ」
「え?!知ってたの?」
累くんは私の顔を見ようとせずにずっと前を向いている。
「君のことはずっと見てた。沙織と初めて出会った時から」
「え…」
まるで告白のようなことを言われて、私は胸がきゅうっと締め付けられた。
心臓の音がうるさくなってくる。
「君は僕を見た時、少しは怖かったかもしれないけど、綺麗って言ってくれたんだ、僕はその瞬間から君のことが好きになってたんだよ」