第17章 【下弦の伍】累
「あれ?沙織?」
ーこの声は…
私は顔を恐る恐る上げてみる。
この声に聞き覚えがあったのだ。
「る…いくん…」
あの頃のままの姿の累くんが目の前に立っていた。
白い肌に赤い模様。若葉色のまつ毛に赤い瞳。
不思議な柄の白い着物も覚えている。
「大きくなってたから一瞬分かんなかったよ、僕のこと、覚えててくれてたんだ」
累くんは嬉しそうに笑って、私に手を差し出してきた。
「ほら、行こう。僕達の家に」
私はその手を取ると、ひどく冷たいことに気が付いた。
そんな時、おばあちゃんが言っていたことを思い出した。
『鬼がこの世にはいるんじゃ。鬼は老けない。人を喰い、己の命を繋いでいく』
ーもしかして、鬼?