第12章 嘴平伊之助
ナンパと認識した瞬間、私は一気に声が出なくなった。
こわい、どうしよう。
「てかおねーさん、おっぱい大っきいし、ちょー可愛いよね、俺らと涼みに行こうよ」
汚い金髪の男が私の手首を掴み、グイッと引き寄せてくる。
「やだ…!離して!」
「は?抵抗すんの?」
「いたっ…!」
ー助けて、伊之助!!
「おい、おめぇら俺の女に何してんだよ」
誰かの声がして、私の手首が解放された。
そこには見慣れた背中があった。
「伊之…助…」
伊之助が男の手首を掴み、上にひねりあげた。男はいたた!と苦痛に顔を歪め、もう1人の方は伊之助の顔に似つかない腕力に青ざめていた。
「い、行こうぜ!」
男たちは走って私たちの目の前から消えていった。
「ありがとう…」
「ほんっと危ねぇな!おめぇは!」
ガシィ!という効果音が着きそうなくらいに強く手を握られる。
「俺の傍から離れんな、わかったか」
「うん…!」