第12章 嘴平伊之助
伊之助は落ち着いてきたのか、普段通りになり、2人で帰路についていた。
「あ、そういやこれ、派手神がくれたんだった」
そう言ってポケットに手をつっこみ、細長い紙切れを私に1枚渡してきた。
「…温泉…旅行券?」
どうやら温泉旅行のペアチケットのようなもので、伊之助の分もあるようだった。
「派手神が『俺は嫁が3人いてペアで行けねぇからお前らにやるよ』って言ってくれたんだ」
「えっ?!そうなの?お礼言わないとじゃん!」
「夏休み明けに言えばいいだろ」
そう言えば、もう少しで夏休みだ。
なんていいタイミングで渡してくれたんだろう。
「何日空いてるかとか確認しなきゃだね」
「おぅ、母ちゃんに聞いてくるわ」
ー伊之助と温泉旅行…!
私は考えただけで胸が高なった。