第12章 嘴平伊之助
「ん」
伊之助が唐突に手を大きく開いて差し出してくる。
「え…?」
「手ェ出せよ」
ー手?
私はおずおずと伊之助に手を差し出すと、すごい勢いで私の手を繋いできた。
急のことに私は目を丸くしていたが、手から伝わってきた伊之助の温度にようやく事を理解して、顔を赤くした。
「これが彼女にするマーキングなんだろ?」
「マーキング?そうかは分かんないけど、すっごい嬉しいよ」
ー初めて手を繋いだ…
この事が嬉しくて、私は伊之助に身体を寄せてぎゅっと愛おしい気持ちを込めて握り返した。
「バッ……!!あんま近づくな!!」
「はぁ?!なんで!」
伊之助の顔を覗き込んでみると、伊之助の顔も真っ赤っかになっており、隠すように反対の腕で顔を覆っていた。
「伊之助も可愛いとこあんじゃ〜ん!」
「からかうな!!ウリィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」
イノシシの鳴き声の真似をしているのか、伊之助は恥ずかしさを紛らわすために大声で叫ぶ。
叫んでいても私の手を離そうとはしない。
ーもしかして、宇髄先生にめっちゃ感謝しないといけないのかな…?