第12章 嘴平伊之助
ピクッ
嘴平の耳が僅かに動いた。
俺はニヤリと笑い、足を組み直した。
「あいつ、結構胸もあんだろ?つまり、男が憧れるボンキュッボンてことだ」
「ぼん…きゅ…ぼん…て、ナンダ?」
嘴平はキョトンとした顔をして、小首を傾げる。
流石は野生児といったところなのか、そういうところの知識には乏しいようだった。
「エロいってことだよ、お前の綾川が色んなやつにエロい目で見られてんだぜ?どう思う?」
「…嫌だ」
目の端を釣り上げて、嘴平は不快感を露わにする。
「お前、マーキングって知ってんの?」
「知ってるぜ!俺は山の王だからな!」
得意げに息を荒くしたり、こいつはほんとに表情がコロコロ変わる。
「よし、なら話は速い!俺様直伝の恋人に対するマーキングを伝授してやるぜ!」