第12章 嘴平伊之助
私は結局、横抱きにされたまま、天ぷら屋まで連れて行かれた。
注文した天ぷらが届き、伊之助は早速割り箸を豪快に割ると、天ぷらに箸を持っていった。
「食うぜ!」
サクッ、と軽い良い音がする海老の天ぷらを頬張るやいなや、さっきまでうるさかった伊之助は黙り込み、顔の周りにホワホワと穏やかな雰囲気が漂った。
ーふふっ、可愛い。
食べ物を食べているとただのあどけない少年でかわいらしい。
伊之助はすごい勢いで天ぷらを食べ終わると、店を出た。
「えっ?!ちょっと伊之助、私まだ食べてるんだかど?!」
「腹いっぱいになったから俺様は走って帰るぜ!」
「会話になってない!!!」
しかし、伊之助は聞く耳を持たず、そのまま天ぷら屋を出て行った。
ーうそ、でしょ…