第12章 嘴平伊之助
ーー翌朝
「おはよう!沙織ちゃん」
「禰豆子ちゃん!おはよ〜」
禰豆子ちゃんと私は家が近いこともあり、朝は一緒に行っている。
長い黒髪にくりっとした可愛らしい瞳。
これぞ女の子といった容姿は誰から見ても可愛い。
禰豆子ちゃんは周りを見渡すと、こてんと首を傾げた。
「あれ?伊之助とは朝一緒に行かないの?」
「伊之助は遅刻ギリギリだし、いっつも。それに…」
ー今は会いたくないかな
私は昨日のことを思い出してうつむく。
「…何かあったの?伊之助と」
「実はね…」
私は禰豆子ちゃんに今思っていることを全て話した。
自分だけ天ぷらを食べてスタコラサッサと帰ってしまうとこ。
まだ手も繋いだことないし、キスもしたことないこと。
告白されて付き合ったけど、それからは好きだという言葉は聞いていないこと。
でも、伊之助は全部悪気なくしているから責められない。
勿論、嬉しかったこともあるし、楽しかったこともある。
「なんだか、友達のころの方が楽しかったかもって…」