第11章 伊黒小芭内
1187 伊黒 と書かれた表札が見え、私はここが伊黒さんの部屋なのかと理解した。
それと同時に一気に心臓が跳ね上がる。
伊黒さんが指を小さい黒い箱のようなところにいれると、ガチャと鍵が開いた。
「入ってくれ」
「お邪魔します…」
泥棒にでもなったような気分で玄関に足を踏み入れる。
すぐ横の靴箱の上に私が去年誕生日にあげたドライフラワーがおいてあり、私は小さく笑みを浮かべた。
「これ、置いててくれてるんですね」
「もちろんだ。このドライフラワーは伊黒家の家宝として受け継がせて貰うつもりだからな」
ーどうしてそんなことを恥ずかしげもなく言えるの…!
私は靴を脱ぎ、真っ直ぐに廊下を進んでリビングに出た。
リビングには黒いカーペットと、黒のレザーのソファに、透明ガラスのミニテーブルが置かれていて、その前に大きなテレビが置いてあった。