第11章 伊黒小芭内
流れるような完璧なエスコートに惚れ惚れとしてしまっていた。
伊黒さんの車に乗り込むと、車の中は爽やかないい香りに包まれていて、大人の車といった印象だった。
「お願いします…」
ーうぅ、緊張する…
心臓がうるさいくらいに鳴り、もしかしたら伊黒さんに聞かれているかもしれない。
ちらりと横を見ると、伊黒さんがすました顔で運転をしている。
ーかっ、かっこいい!!
ハンドルを握る手は繊細で優しいのに、まくられた袖から見える腕には血管が浮き出ていて男らしい。
男性には珍しいロングヘアだが、伊黒さんの中性的な顔にぴったりで、独特の世界観が保たれている。
「…あまり見つめられると、こちらも緊張するんだが」
赤信号になった所で、伊黒さんは私の方を見る。
すると伊黒さんはどうやら赤面しているみたいで、頬が赤くなっていた。
「ごめんなさい!!そうですよね!やめます!」