第10章 我妻善逸 ②
「可愛いねぇ、可愛いねぇ…抵抗して男に勝てる訳がないのにさぁ…」
ゾク、と悪寒が走る。
わたしはこの悪寒を知っている。
「待って我妻くん、聞きたいことがあるの」
我妻くんは私の首筋から顔をあげて、ニコリと微笑んだ。
「うん、沙織ちゃんの質問になら答えてあげる」
私は唾を呑み込んだ。
でもさっきの悪寒に行動に、もう自分の中で答えは出ていた。
「今までにも…私のことずっと見てたの?」
我妻くんはその言葉を聞くと、顔を下に向けた。
ーヤバい…怒らせた…?
「ふふっ、ははは、うぃひひひひ!」
怖い。
普通の人の笑顔なんかじゃなくて、どこか闇を抱えた黒い笑顔に私は全身の血の気が引いた。