第10章 我妻善逸 ②
「え…?あが…つま…くん?」
私は扉を開けてしばらく、その場から動けなかった。
私の席に座り、私の体操服を広げて顔面にあてている我妻くんを見て、足先からゾワっとした感覚が上ってきた。
「ああ、沙織ちゃん♡」
顔面から体操服が離れて、我妻くんの顔が開かれると、その顔は恍惚とした表情になっており、目がとろんとしていた。
「びっくりしたよねぇ、ごめんねぇ」
我妻くんは私の席から立ち上がると、私の方へと歩いてくる。
私は後ずさりしたかったが、ロックがかかったかのように身体が動かない。
「なにしてるの…」
ようやく絞り出した声は自分でもみっともなくなるくらいに情けなかった。
我妻くんが扉を閉めて、カギをかけるととうとう逃げ場はなくなった。
「沙織ちゃんを味わってたんだよ♡」