第10章 我妻善逸 ②
ーはああああ〜〜っ…今日もかわいいよ…沙織ちゃん!!
俺はグラウンドを走りながら途切れ途切れに聞こえる沙織ちゃんの声に耳を傾けていた。
地獄耳なんかよりも俺の耳は生まれつきよくて、他人の感情が聞こえてくる心臓の音で分かる。
「おい紋逸…きしょい顔してんぞ」
伊之助は俺を完璧に軽蔑の目で見ているがそんなものは関係ない。
「うぇへへ…」
「伊之助、善逸はまた沙織のことについて考えてるんだよ、ほっといておこう」
「権八郎がそう言うならそうするぜ」
「なぁんだよぉ、ツれないなぁ」