第8章 「The hole」宇髄天元
「…、沙織、沙織!」
私は誰かに呼ばれた気がして、うっすらと目を開けた。
「…う、宇髄先生?」
そんな訳がない。
きっと私は父に殺されて、天国に行ったんだ。
「おいおいおい、目ぇ閉じようとすんな、お前まだ生きてんぞ」
宇髄先生が私にデコピンをして、そう言うと、私は驚きのあまり起き上がった。
「クーラー…効いてる…」
いつもは父がケチってクーラーなんてかけないのに、部屋の中は静かだった。
私と宇髄先生がいるのは、小汚いリビングで、私は宇髄先生に後ろから抱きすくめられていた。
「宇髄先生、どうしてここに?」
「お前の電話聞いてすっ飛んできたんだよ…生きててよかった…」
宇髄先生は後ろから私を抱きしめた。