第8章 「The hole」宇髄天元
父が怒りに顔を歪める中、お父さんの笑い顔がよぎった。
小さい頃、まだお母さんが生きている時、お父さんの腕に抱かれながら見上げたお父さんの優しい笑顔がよぎった。
なのにどうして今は…
『生まれてきてくれてありがとう、沙織』って言ってくれたお父さんはどこ?
あれは嘘だったの?
私…生まれちゃいけなかったの…?
宇髄先生、卒業したら一緒に住むって約束してたのに…守れなくてごめんなさい。
でも私、先生に言われたようにちゃんと逃げようとしたよ。
自分のこと大切にしてみたよ。
もっと…先生と一緒にいたかったよ。
もっとあなたを愛したかったよ
「ごめ、んな…さい…」
私は最後に1粒の涙を流して、意識を手放した。