第8章 「The hole」宇髄天元
父は私が首にひっかけていたネックレスを掴んで引っ張りあげた。
喉が圧迫されて、私はさらに深く眉間にシワを寄せた。
「いいもんしてんじゃねぇかよ、寄越せ」
父が勢いを強めてネックレスを引っ張る。
私の首にネックレスがくい込んで痛い。
「…いや」
「あ?」
「いや!!これは渡さない!!」
私は父のソコに噛みつき、ひるんだ隙にケータイを握ってトイレへと逃げ込んだ。
「ふざけるなよぉぉぉぉ!!!沙織!!!!」
父の怒号が真夜中に響く。
荒々しい足音は私が隠れているトイレの前で止まり、何度も何度も扉を蹴った。
その中で私は小さくうずくまり、ネックレスを握りしめていた。