第8章 「The hole」宇髄天元
翌日。
私はお昼頃に校門をくぐった。
理由は簡単で、父の慰みものになっていたからだ。
階段を上がり、教室に向かおうとしている最中、背後に誰かの気配を感じて後ろを振り返った。
そこにはポケットに両手を突っ込んだ宇髄先生が私に向かって歩いていた。
「綾川、ちょこちょこ遅刻してるけど、なんかあったのか?」
大きく心臓が鼓動を重々しく打った。
「いえ…何も、ないです」
「ほぉん…?じゃあ、その首にあるアザも何もないんだな?」
私は咄嗟に首に手をあてた。
気づかなかった。
「…なんかあるんだろ、お前」
宇髄先生がそういう声はやけに静かで落ち着いて聞こえた。
「宇髄先生には、関係ないです」
言ったところで何も変わらないじゃない。