第1章 美術教師 宇髄天元
「ここ、記入漏れな」
ーなんだ、そんなことか…
私はプリントを受け取ると筆箱からシャーペンを取り出して記入していなかったスペースに記入をした。
「じゃあこれで…」
あんなもの見られるのは慣れっこなんだろうなぁとか上の空に思って私はプリントを机に置いて出て行こうとすると、
「おい、待て」
宇髄先生が私の手の上に手のひらを置いてきた。
ゴツゴツした太い暖かい指が重なって心臓が鼓動を早くする。
「お前、見てただろ」
私は振り返りたくなくてずっと顔を扉の方に向けていた。
後ろから心地の良い低音が耳を掠める。
「な、なんのことですか?」
「おいおいおい、とぼけるのはよくねぇよなぁ?」