第6章 時透無一郎
すると筋肉は服の下に隠れてしまった。
「あっちで顔洗ってくるからそこで待ってて」
「は、はひ…」
私はよろめくようにして、カナヲの横に座り直した。
「だめ…無一郎…すごい…」
「語彙力がなくなってるよ、沙織」
ーカナヲだって炭治郎の腹筋見たらそうなるよ絶対…
大きく深呼吸をすると少し落ち着いてきた。
さっき、無一郎が戦っていたコートではすでに3年生が試合を始めていた。
「3年生の迫力すごいね!」
「うん…すごい」
カナヲと2人で3年生のコートを見ていると、大声で誰かがなにかをこっちに向かって叫んでいた。
「あぶなーーい!!」
「え?」
その瞬間、私の頭に鈍い痛みが走った。
パスを受け取りそびれたバスケットボールが私の頭を直撃していったのだ。
重い衝撃に私の身体は後ろに勢いよく倒れて、後頭部を床に打ち付けてしまった。
「沙織!」
ーあれ…遠くから無一郎の声がする…
私はそう思った途端に意識を手放した。