第1章 美術教師 宇髄天元
「せんせ、今日も最高だったよ」
生徒は制服を着直すとそう言った。
俺はやめたはずのタバコをふかした。
「おー、そりゃ俺が抱いたからな」
「やだせんせ、ウケる〜」
生徒が後ろから抱きしめてきた。
「じゃ、また明日ね」
俺は手をひらひらさせて生徒を見送ったが、生徒は踵をこちらに返してきた。
「これ、あの子が落としてったんじゃない?」
1枚の美術課題プリント。
名前の欄には綾川と書かれていた。
「あんがとな」
「うふ、いいよぉ」
生徒は軽やかな足取りで靴箱に向かっていった。
俺はタバコの火を消し、そのプリントをまじまじと見つめた。
「綾川…」